CECINA Collaboration

EXTRA FLAVOR - 雋 -

わしの尾「雋(せん)」

山田錦を精米歩合35%まで磨き造り上げる、凛と品の良い後味。岩手で開発された「岩手吟醸2号」からより強い酵母を選抜し、すっきりと酸の強い風味を特徴とした、わしの尾だけの酵母「WS-1」を使用しています。酵母由来の酸味は、貯蔵し、熟成させていく過程でゆっくりと、バランスよく変化していく。岩手という土地と、長い時間が造りだす複雑な味わいを愉しんでもらうことを目指したお酒です。

 
SPECIAL INTERVIEW

『EXTRA FLAVOR - 雋 -』が生まれるまで

肉のふがね 府金 伸治
×
わしの尾 代表取締役 工藤 朋 対談

肉のふがね 府金 伸治 × わしの尾 代表取締役 工藤 朋 対談

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創業は文政12年、1829年です。

府金

わしの尾さんには、弊社の商品「岩手短 和牛吟 粕漬」に使う酒粕をご提 供いただいて以来、お世話になっています。工藤社長は8代目の蔵元でいらっしゃいますが、酒蔵はどのくらいの歴史があるのですか。

工藤

創業は文政12年、1829年です。蔵は250年ぐらい前からあったもので、それ を譲り受けて酒造りを始めました。

うちの酒は地元で飲んでもらいたい

工藤

生産するお酒の量は2,000石ぐらい。一升瓶が10本で1斗、10斗が1石です から、一升瓶で20万本ぐらいのお酒を造っている酒蔵です。基本的に岩手県外には 卸していません。先代の社長が「うちの酒は地元で飲んでもらいたい」と、岩手県内での販売に方針を切り替えたんです。 

府金

岩手に来たら飲むことができるお酒、ということですね。 

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原料には、岩手ならではのものを

府金

わしの尾さんのお酒にはどんな特徴がありますか。 

工藤

原料については、岩手ならではのものを使うようにしています。米は、「山田錦」を除くと全て県産米です。岩手県でも「結の香」という優秀な酒米が開発されたので、平成24年の造りからは、鑑評会やコンクールに出品するお酒はその米で 仕込んでいます。 「結の香」は酒米の王といわれる「山田錦」で造るのと同じくらい高い評価をいただいていて、令和2年の東北清酒鑑評会では第2位にあたる評価員特別賞を受賞しましたし、フランスの日本酒コンクール「Kura Master2021」では純米大吟醸酒部門でトップ5に選出されました。

雋という字がもつ
「ぬきんでる」という意味

雋という字がもつ「ぬきんでる」という意味

府金

セシーナには「雋」の酒粕を使わせていただいています。銘柄の「雋」には、 どういった意味があるんでしょうか。

工藤

「雋」は、平成5年から造っている純米吟醸酒です。「雋」という字を見ると「隹」(ふるとり)の下に「弓」で、弓で射るほど高く飛ぶ野鳥を示しています。優れるとか抜きんでるという意味があります。

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岩手吟醸2号から
さらに選び抜いた酵母
「WS-1」

岩手吟醸2号からさらに選び抜いた酵母
「WS-1」

府金

どんなお酒なんでしょう?

工藤

「山田錦」を精米歩合35%まで磨いた、きれいで味わいのあるお酒です。酵母は、岩手県で開発された吟醸酒用酵母「岩手吟醸2号」でしたが、次第に発酵力が弱くなってきまして、今は「岩手吟醸2号」の中でも強い酵母を選抜した「WS-1」という、うちの蔵だけの酵母を使っています。

熟成させて呑むことを
想定した酒「雋」

熟成させて呑むことを想定した酒「雋」

工藤

この「WS-1」という酵母は酸が強く出るので、「雋」は搾ってしばらく貯蔵して、熟成させていくことを想定しています。皆さんに普段召し上がっていただくお酒ですね。そのわりに、いちばん高いんですけどね(笑)。

府金

酸が強いというのは?

工藤

日本酒の酸というのは乳酸とかリンゴ酸が主体になるのですが、ちょっとツンツンするんですよね。味わいは引き締まるけれども、柔らかさというか、ふわっと広がる感じが消えてしまうんです。

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搾りたてにはない、複雑さとバランス

府金

寝かせることで美味しさはかわる? 

工藤

「雋」については、もともと山田錦を使ったきれいな味わいのお酒ですから、熟成させても非常にゆっくり変わっていくんです。今はどちらかというとフレッシュなお酒が人気ですけども、ちょっと寝かせることによって、丸みだとか、まろやかさみたいなものが出てくるんです。味わいも、搾ったばかりのお酒はきれいだけれど単調といえば単調で、熟成させることによって複雑な味わいが出てくる。熟成する中で出てくる複雑さというのは、いろんなものを混ぜて作った複雑さとは違って、バランスが取れています。要するに、熟成していろいろな味わいが出てくると、酸が立っていても気にならなくなるわけです。「雋」はそこを目指しています。

府金

セシーナも熟成が進むと、塩味がまろみに変わってくるんですよね。共通するものを感じます。

3年間。待ちに待った雋の酒粕

府金

岩手の素晴らしい素材を使った商品開発をしたいと思い、「雋」の酒粕に注目したのですが、使わせていただきたいとお願いしてから実 に分けていただくまで、3年かかりました。待ちに待った酒粕でした。

工藤

これまでは全てのお酒の酒粕をまとめていたので、すぐに対応できなかったんです。でも「雋の酒粕を分けてほしい」と言われて、おもしろいなあと思いました。私もずっと、もったいないと感じていたんです。今は、「雋」と「結の香」の酒粕は別にしています。

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麹の酵素がセシーナを深く柔らかに

府金

うちはフードロス削減の取り組みに力を入れていて、セシーナに塗布している油は、短角牛の脂なんです。脂は最終的には廃棄されるので、セシーナに活用しました。そこに「雋」の酒粕という地元のフレーバーを加えるというのは、すごく価値になると思っていたんです。さまざまな試作をしてきた中でも、「雋」の酒粕を使ったセシーナは柔らかくできました。これは酵素の力なんでしょうか。

工藤

試食してみて、私もすごく柔らかいと思いました。酒粕にまだ残っている麹の酵素が効いたんじゃないでしょうか。

府金

これを例えばどこかのお店で提供するとなった時、料理人がどう誂えてくるのかすごく楽しみです。それが食べ方の提案に繋がっていくと思いますから。

セシーナと酒。
広がる美味しい出会いの瞬間

セシーナと酒。広がる美味しい出会いの瞬間

工藤

さらに、お酒が加わると食べ物の味わいが少し変わってくるので、特にセシーナは複雑な味わいのお肉ですから、どんなお酒と合わせるかも考えてみたいですね。「雋」の酒粕を使っているので、「雋」に合わせるのもいいと思いますが、シンプルな味わいのお酒がいいのか、複雑な方がいいのかというのも試してみたいです。ちょうど今、500リットルぐらいの小さな木桶で「金印」と「北窓三友」と「陸羽132号」を造っているのですが、木桶仕込みの「北窓三友」と合わせてみたらどうだろうとか。

府金

いいですね。セシーナは、自分が一生をかけて作り上げていくものだと思っています。岩手県北がセシーナの聖地になるように、付加価値を高めていきたい。そこには、お酒が必要不可欠だ、と私も考えています。

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